先行研究
日中において多義動詞についての先行研究は少なくない。あるのは理論の知識に関する研究であり、あるのは具体的な多義動詞を分析する研究である。本文では認知言語学の立場に立って、多義動詞「かえる」を対象として、以下の研究を参考し、「かえる」の認知プロセスと意味拡張を明らかにする。
- 認知言語学に関する先行研究
新世紀に入ってから、認知言語学を使っている日中研究が盛んに行われている。吉村公宏『はじめての認知言語学』(2004:11)は「認知」とは、ものを見たり聞いたり感じたりする感覚の働きと、それをもとにして記憶・学習・判断をする精神の働きを総称した用語であると指す。吉村公宏は、動詞意味を分析する時、カテゴリー化、プロトタイプ、家族的類似性、スキーマ、メタファー、メトニミーなど認知方法を通して、プロトタイプ的意味を捉えると提唱する。
- 多義語に関する先行研究
多義動詞を分析するとき、筆者が他人の研究の方法総結する。①あるのは日中対照研究方法を用いて、日本語で中国での各意味や語意拡張を分析して、異同点を比較する。②あるのは具体的な多義動詞を分析するばかりでなく、その関連の家族動詞と派生動詞についてのシステムを深く分析する。③あるのは複合動詞が構成される時に発生したそれぞれの語義を分析する。
松田文子・白石知代(2004)の多義語研究では、「コア図式論」という概念が主張する。松田文子・白石知代によって、「コア図式論」は母語話者の持つ言語直観の背後にあるものをコア(「概念イメージ」)として捉え、それを一つの認知図式(コア図式)に表して説明しようとするものである.この方法の利点として一つひとつばらばらに点として理解していた多義語の意味を一つの図式のバリエーションとして包括的に理解できることや隣接語との意味的差異もコアの違いによって説明できるようになることが指摘されている 。
国広哲弥は「 日本語動詞の多義体系」で、「とぐ」、「みがく」、「止まる」、「流す」、「流れる」など多くの具体的な多義動詞について詳しく分析した。国広哲弥(1994)の多義語研究では、「現象素」という概念が提案する。国広哲弥によって、「現象素」とは、ある語が指す外界の物、動き、属性などで、五感で直接形に捉えることができるものである。
3. 多義語「かえる」に関する先行研究
郭永刚(2004:19)は語源という観点から「カ」族の同源動詞を考察した。「カ」族に関する同源動詞は交差という意味を含むと指摘する。郭永刚は動詞の意味と基本的な用法によって、「カ」族の同源動詞の意味を五つの類を分ける。①手足が交差する(抱える、書く、掻く、駆ける)。②代わることと交換することに関する動詞(買う、交わす、変・代・換・替わる、返る、返す)。③咀嚼に関する動詞(かじる、かむ、かもす)。④遮断する(限る、囲む、隠す、隠れる、飼う)。④覆う(かぶる、かばう)。郭永刚の研究では「カ」族の同源動詞を比較的全面的分析する。しかしながら、説明には例を用いないので、説得力に欠ける。
任力·张仟(2012)は認知言語学から、多義語「かえる」を研究する。「変える」、「代える」、「換える」、「替える」、「返る」を中心にそれぞれの意味を詳しく分析し、本義から派生した意味の関連について説明する。しかし、任力·张仟は主に分析したのは「か・える」の意味である。「かえ・る」の意味拡張は説明しない。そのため、動詞「かえる」の意味拡張と各意味間の関連については考察の余地がある。
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